事業計画書をAIに作らせたら、前提を伝えた途端に数字が全部動いた話

AI×スモールビジネス

同じAIに、同じ「古民家カフェの収支を試算して」という依頼をしたのに、出てきた数字が全然違う——。

こんにちは、えびブログです。今回はちょっと毛色の違う話をします。うちの古民家カフェの事業計画書を、AI(Claude)に作らせてみた話です。正確には事業計画書まるごとではなくて、その中でも収支シミュレーションの部分をAIで試算してみた、という内容ですね。

先に結論っぽいことを言っておくと、AIって渡す前提次第で出力がここまで変わるのか、というのを今回けっこう体感しました。同じツール、同じ依頼内容、違うのはプロンプトに書いた前提条件の量だけ。それだけで、出てくる収支の数字も、足りていない視点の指摘も、全部変わってくるんです。

事業計画書をAIで作ろうとしている方、あるいはAIを仕事で使い始めたばかりの方にも、役に立つ話になっているんじゃないかなと思います。

銀行に出す資料がいるらしい、と母から聞いた

きっかけは、母から聞いた何気ない一言でした。

融資の手続きを進める中で、銀行に出す事業計画書が必要になるらしい、と。まだ本番の提出は先なんですけど、どんな数字感になるのか自分でも掴んでおきたいなと思ったんです。

私はIT担当の立場で、このへんの資料周りは「手伝える部分は手伝う」スタンスで関わっています。実際に作るのは母や税理士さんになるとしても、事前に「月商このくらいなら営業利益はこのくらい」という肌感を持っておきたい。改装見積もりで約3,759万円という金額を見たあと(前の記事に書いたやつです)、毎月どのくらいの売上があれば回っていくのか、数字で見ないと不安だなという気持ちもありました…。

で、手元のツールで一番気軽に試せるのがAIだったので、Claudeの無料版で試してみることにしました。内装デザインの検討でもAIを使っていて(その話はこの記事に書いています)、「AIって壁打ち相手として意外と使えるな」という手応えがあったのも大きかったです。プロじゃないので完璧な計画書を作る気は最初からなくて、「数字感を掴む」くらいの温度感です。

仕事の合間に、雑に聞いてみた

最初にやったのは、本当に雑な問いかけでした。お昼休憩中に思いつきで打ち込んだプロンプトがこれです。

カフェのコストを試算してほしい。月商100万円くらいの小さいカフェで、家族経営です。

これだけ。古民家であることも、立地も、席数も、何も伝えていません(笑)。

返ってきたのは、きれいに整った収支試算でした。月商100万円、原価率30%、家賃15万円、水道光熱費5万円——各項目に妥当そうな数字が並んで、最終的な営業利益は45万円。家族2人で経営した場合、1人あたり約22万円、という計算です。

出力としては、ぱっと見ちゃんとしてるんですよ。「おお、それっぽいのが出てきたな」と。でも、よく読むとあちこちが自分たちの状況と合っていないことに気づきました。

出力を見て気づいた3つのズレ

ズレに気づいたのは、出力を家族でカフェにしようとしている実際の条件と照らし合わせてみたときです。

1つ目は、家賃15万円が計上されていたこと。うちは祖父母の家を使うので、家賃はかからないんです。これは結構大きくて、営業利益に15万円まるっと効いてきます。

2つ目は、営業日数が31日になっていたこと。出力には「1日40人 × 31日」とあったんですが、定休日の概念がそもそも考慮されていない…。家族経営で週5日前後の営業を想定しているうちにとっては、この前提はかなりズレています。

3つ目は、客単価と客数の設定。800円×40人という数字が勝手に置かれていたんですが、これは一般的なカフェの平均値みたいなものを採用しているだけで、うちのメニュー構成や席数とは関係なく置かれた仮置きの数字です。

要するに、AIは何も情報を渡されなかったので、業界平均のような一般的な数字で全部を埋めてきたわけです。考えてみれば当たり前ですよね。月商と家族経営だけしか伝えていないんだから、それ以外はAIの側で勝手に設定するしかない。

ただ、この出力のままで「うちの事業計画です」と扱うのは危険だな、と思いました。数字の見た目はちゃんとしているのに、中身は自分たちの状況をほとんど反映していない。これ、怖いのは「それっぽく見える」という部分なんですよね。何も知らずに眺めたら、そのまま信じてしまいそうになります…。

同じ日の夜、前提条件を作り込んで再挑戦

「これは作り直しだな」となって、同じ日の夜、腰を据えてプロンプトを考え直しました。

今度は自分たちの条件を、思いつく限り書き出してから渡しました。こんな内容です。

以下の前提条件で、古民家カフェの月間コストを項目別に試算してください。

【売上前提】
・月商目標:約108万円
・席数:16席
・客単価:950円
・営業時間:10:00〜18:00
・定休日:平日2日(月間営業日:平日13日+週末8日=21日)
・席稼働率:平日45%/週末64%

【経営条件】
・家族経営(母・姉の2名、外部スタッフなし)
・自己所有物件(家賃なし)
・千葉県習志野市実籾
・カフェ+スイーツ業態(食事メニューなし)

席数、客単価、営業日数、業態、立地、家賃なし——最初のプロンプトで勝手に埋められていた部分を、全部自分で指定しました。

で、出てきた結果が見事に別物だったんです!

家賃はもちろんゼロ。営業日数は21日で計算されていて、食材原価は324,000円、水道光熱費は55,000円(古民家は断熱性が低いから冷暖房効率が悪い、というコメントつき)。減価償却費まで仮定を明記した上で計上されていて、営業利益は約60万円。

ここで「金額が増えた!」と喜ぶ話ではなくて、出てくる項目の解像度そのものが変わっているのがポイントです。たとえば水道光熱費の内訳が「電気35,000円/ガス12,000円/水道8,000円」とブレイクダウンされていたり、「古民家は断熱性が低い」という前提で冷暖房費が少し高めに設定されていたり。前提を渡したからこそ出てきた粒度です。

ここまで来たところで、もう1つ入れ忘れていたことに気づきました。改装費3,759万円の借入返済です…。これを追加で依頼したら、月額返済額を約231,500円と試算してくれて、返済を含めた総費用が約70万円、返済後の収支が約37万円という数字が出てきました。さらに「2名の報酬を引いた手残りシミュレーション」まで自動で計算してくれて、家族2人で月40万円の報酬を取ると手残りはマイナス、月35万円でも1人あたり約1.4万円しか残らない——という、かなりリアルな現実がそこに並んでいました。

この手残りの生々しい話は、次の成果物編の記事で掘り下げる予定なので、今回はここまでにしておきます。

2つの結果を並べて見ると、数字がこんなに違う

簡単プロンプトと作り込みプロンプト。2つの結果を表で並べると、こうなります。

項目簡単プロンプト作り込みプロンプト
月商1,000,000円1,080,000円
家賃150,000円0円(自己所有)
営業日数31日21日(平日13日+週末8日)
客単価800円950円
1日の客数40人約54人
食材原価300,000円324,000円
水道光熱費50,000円55,000円
減価償却費なし36,000円
借入返済なし231,500円
営業利益450,000円約377,500円(返済込み)

営業利益だけを見ると簡単版のほうが多く見えるんですが、これは簡単版には借入返済が含まれていないからです。作り込み版では改装費3,759万円の返済(月約23万円)が乗っているので、単純比較はできない点だけ注意してください。

家賃が15万円から0円になり、営業日数は31日から21日に減り、借入返済が約23万円乗ってきて——項目レベルで見ると、ほとんど別物の試算結果です。

同じAI、同じ依頼、違うのはプロンプトに書いた前提条件だけ。それで、出てくる数字もカバーされる論点も全然違うものになる。この差を並べて見ると、「AIは前提を渡さなかった分を一般的な数字で埋める」という事実がはっきりわかります。

前提を言語化する作業こそが、事業計画そのものだった

ここからが、今回いちばん「なるほどな」と思った話です。

AIを使いこなすテクニックの話ではなくて、事業計画書そのものの作り方についての気づきなんですよね。

作り込みプロンプトを書くために、自分たちの条件を全部書き出していく作業——席数はどうする、営業日数は何日にする、家族経営だから人件費はどう扱う、客単価はいくらを想定するか。この言語化の作業自体が、実は事業計画書を作るということの中身なんじゃないかと思ったんです。

AIに渡す前提を1つずつ確定していく過程で、「あ、席数ってまだ決めてなかったな」「定休日って平日2日でいいんだっけ」みたいに、自分たちが決めきれていない項目が次々と浮かび上がってきます。AIに書いてもらうためのプロンプトを作る作業が、結果的に「家族として何を決めなきゃいけないか」の洗い出しになっていた。

これが、AIに雑に聞いただけでは絶対に起きなかったことだな、と思います。雑なプロンプトだと、AIが勝手に前提を埋めてくれるので、自分たちが何を決めていないかにすら気づかないんです。前提を自分の手で書き出したからこそ、自分たちの計画の「まだ決まっていない部分」が見えてきました。

事業計画書をAIで作るというのは、AIに考えさせることじゃなくて、AIに渡す情報を自分たちで整理することなんだな、と。たぶんこれ、事業計画に限らず、AIに何か考えさせる系のタスク全般に当てはまるんだと思います。プロンプトを作り込む作業は、実は自分の頭の中を整理する作業でもあるんですよね。

次の記事に続きます

今回は事業計画をAIで作るプロセスの話なので、ここまでにしておきます。

次回は、出てきた数字を使って「家族2人でカフェをやって生活していけるのか?」という、より踏み込んだ話を書く予定です。返済込みで月37万円の収支から、2人分の報酬を出したときに残るのはいくらなのか。カフェ経営で想定される収入のリアルを、隠さずに並べてみようと思っています。気が重いパートですが、同じように家族で開業を考えている方には役立つ記事になるはずです。

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